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大阪地方裁判所 平成9年(ワ)7811号 判決 1999年6月01日

大阪府八尾市太田二丁目二二番地

原告

株式会社アテックス

右代表者代表取締役

原島裕

右訴訟代理人弁護士

筒井豊

右補佐人弁理士

中谷武嗣

大阪府松原市天美北二丁目一九番一号

被告

有限会社天美製作所

右代表者代表取締役

芝田耕藏

右訴訟代理人弁護士

村林隆一

深堀知子

右補佐人弁理士

永田良昭

主文

一  原告の請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第一  請求

一  被告は、別紙(一)記載の物件を輸入し、及び販売してはならない。

二  被告は、原告に対し、金一億一七八七万五〇〇〇円及びうち金八二〇〇万円については平成九年八月二三日から、うち金三五八七万五〇〇〇円については平成一〇年八月一日からそれぞれ支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。

第二  事案の概要等

一  事案の概要

本件は、バネを張架することにより折り畳みを容易にしたベッドについて実用新案権を有し、その実施品である別紙(二)記載の折り畳みベッド(以下「原告商品」という。)を輸入、販売する原告が、別紙(一)記載のベッドを輸入、販売する被告に対し、被告の右商品は原告商品の形態を模倣したものであるとして不正競争防止法四条、二条一項三号に基づいて損害賠償を請求するとともに、被告の商品は原告の有する右実用新案権を侵害するとして、輸入、販売の差止め及び損害賠償を請求している事案である(ただし、被告の輸入、販売する別紙(一)記載の形状を有するベッドのうち、ストライプ柄のマット面を有するものは、本訴の対象となっていない。以下、ストライプ柄のマット面を有するベッドを除いた別紙(一)記載のベッドを「被告商品」という。)。

二  前提的事実(証拠の掲記がないものは争いがない。)

1  当事者

原告は、家庭用電気製品の販売、化粧品、日用雑貨品の販売その他の業務並びにこれらに附帯関連する一切の業務を目的とする会社である。

被告は、魔法瓶の組立、加工並びにこれに附帯関連する一切の業務を目的とする会社である。

2  原告の有する実用新案権

(一) 原告は、次の実用新案権(以下「本件実用新案権」という。)の権利者である。

登録番号 第三〇〇三三八五号

考案の名称 ベッド

出願日 平成六年四月二〇日(実願平六一五五四二号)

登録日 平成六年八月一〇日

(二) 本件実用新案権は、出願当初は実用新案登録請求の範囲に請求項8まで記載されていたが、実用新案法一四条の二に基づく訂正により請求項1、2及び7が削除され、また、被告が申し立てた無効審判請求事件(平成九年審判第四〇〇三一号)の審決において請求項3ないし5が無効とされてこれが確定したため、現在、有効に存続しているのは、請求項6及び8のみである(弁論の全趣旨)。

本訴において問題となるのは請求項6であり、右請求項の実用新案登録請求の範囲は、別添登録実用新案公報(以下「本件公報」という。)該当欄記載のとおりである(以下、請求項6の考案を「本件考案」という。)。

(三) 本件考案の構成要件

本件考案の構成要件を分説すると、次のとおりである(請求項6は請求項1の考案の従属形式であるため、両者を総合した構成要件を記載する。)。

A 前ベッド半体2及び後ベッド半体3を備え、

B 上記前ベッド半体2と後ベッド半体3を、水平展開自在、かつ該前ベッド半体2の裏面2a側と該後ベッド半体3の裏面3a側が相互に近接する倒立V字型に折畳み自在として、枢着すると共に

C 上記倒立V字型の方向へ折畳まれるように弾発付勢する、一対の第1.第2引張バネ33、34からなる弾発部材Sを設け、

D 第1引張バネ33は前ベッド半体2の前端と中間支持脚12の間に張架され、かつ、第2引張バネ34は後ベッド半体3の後端と中間支持脚12の間に張架されたことを特徴とする

E ベッド。

(四) 本件考案の作用効果

本件公報には、本件考案の作用効果として、次の趣旨の記載がある。

前後ベッド半体は、側面視倒立V字型に折畳まれるので、前後ベッド半体に布団を載せたまま収納・展開することができ、収納・展開の際に布団の位置がずれたりしない。特に、布団が広がる方向の力を自重によって受けるので、型くずれを生じず、しわもよりにくい。従って、別の場所に布団を収納する必要がなく、布団収納のための手間とスペースを省くことができる。

さらに、安価に製作できるとともに、第1・第2引張バネ33、34に関する構成により、水平展開状態近くで比較的大きい上昇力Fを生じて、楽に手で折畳むことができるように有効に補助してくれる。

3(一)  被告は、被告商品を輸入、販売している。

(二)  被告商品は、本件考案の構成要件AないしC及びEを充足する(弁論の全趣旨)。

(三)  被告は、平成八年一一月から平成九年一二月一三日までの間、被告商品について、シングルサイズを五万八八二六台、ダブルサイズを一万三五八二台販売した。

4  原告は、被告に対し、平成九年六月一一日付警告書により、本件実用新案権の技術評価書を提示して、被告商品の輸入、販売行為に対して警告を行った。

第三  争点

一  実用新案権侵害について

被告商品は、本件考案の構成要件Dを充足するか。

すなわち、被告商品は、第1引張バネが前ベッド半体の「前端」に、第2引張バネが後ベッド半体の「後端」に張架されているか。

二  不正競争防止法違反について

被告商品は原告商品の形態を模倣したものといえるか。

また、原告商品の形態は、同種商品が通常有する形態か。

三  損害

第四  当事者の主張

一  争点一(被告商品は、本件考案の構成要件Dを充足するか)について

【原告の主張】

1 本件考案の「先端」、「後端」の意義について

本件考案の「先端」及び「後端」とは、ベッド半体の起端、中間部分を除いた一定の範囲の位置を指す。

(一)(1) 本件考案における「前ベッド半体」、「後ベッド半体」は、技術思想としては全体が四角形の平板状のものであれば足り、必ずしも周囲のパイプ材等の基枠のみからなるものではない。これを前提とすれば、「引張バネ張架位置」である「前端」、「後端」とは、その技術的目的を達成するために有効な位置であって、通常の用語の意味において「前端」、「後端」と認められれば足りる。換言すれば、「前端」、「後端」とは、ある程度の幅のある「ゾーン」(範囲)を意味すると解することができる。

(2) このような解釈は、本件公報の考案の詳細な説明によっても裏付けられる。例えば、本件公報の段落【0025】には、「支持台枠31をベッド全体の後端位置に設けている。この支持体枠31は、2個の車輪35、35を有する前後方向の水平杆36と、それを左右連結する横杆37とを備えており、後ベッド半体3の後端部を上下揺動自在に枢着(受支)している。」との記載があり、これと図4及び図5を参酌すれば、「起端」と「中間」を除いた位置が「前端」又は「後端」であるといえる。同様に、「前端」、「後端」を範囲として解釈できる根拠は、右の他にも考案の詳細な説明中に認めることができる。

(3) また、一般に「端」という語は、いわゆる「edge」の意味だけに限らず、「part」(一部分)の意味にも用いられている(「日本語大辞典」(講談社))。本件公報でも、特に「edge」を表す場合は、「中間支持脚12(の下端縁)」のように「端縁」という語句が意識的に思いられている。したがって、例えば「端縁」のように明らかに「edge」を意味する語句が用いられている場合は格別、通常の意味で用いられている「前端」、「後端」を、「edge」の意味に限定して解さなければならない理由はなく、「part」(ゾーン)の意味に解することは十分に合理的である。

(二) 被告は、公知技術に基づいて、本件考案の解釈を文言通りとしなければならないと主張するが、以下のとおり失当である。

(1) 昭和五四年第四九二〇九号公開実用新案公報について

右公報の折り畳み式ベッドは、片方の端を床に固定する構造のもので、スプリングがなくとも折り畳み可能であり、スプリングは、ベッドを折り畳む際に取手を持ち上げる力を補助する機能を有するだけである(なお、右公報のスプリング4について詳細は書かれていないが、引張バネではなく圧縮バネと考えられる。)。これに対し、本件考案の折り畳みベッドは、その一端を床等に固定することは要件とはしないため、基本的にスプリングがなければ、把手を持ち上げてベッドを倒立V字型に折り畳むことは物理的に不可能である。したがって、右公報は、床固定型の折り畳みベッドにおいてスプリングが上昇力を補助するだけであるのに対し、本件考案は、非固定型の折り畳みベッドにおいて、スプリングが、上昇力の補助だけでなく、そもそもベッドの折り畳みを物理的に可能にしているという点で、両者には根本的な相違がある。

このことから考えれば、右公報が先行の公知技術としての意味を有するのは、床固定型の折り畳みベッドにおいて上昇力を量的に補助する効果のあるスプリングを開示した点のみであり、本件考案のように、非固定型の折り畳み機能自体の実現という技術は何ら開示していない。

(2) 昭和五三年第一四九四五二号公開特許公報について

右公報に開示されたベッドは折り畳みベッドではない。例えば右公報第4図によれば、一対のバネの一つは、ベッドの裏側中央に設けられた支持脚と支持材又は化粧支持板との間に設けられているから、ベッドを格納する場合に大きな力を要する。また、右公報記載のベッドは、一端が格納箱に固定されており、本件考案のような非固定型の折り畳みベッドにおける折り畳み機能の実現という技術は一切開示していない。

したがって、右公報に先行の公知技術としての何らかの意義があるとすれば、バネをもってベッドの格納における上昇力を補助する技術をそれなりに開示している点にあるとしか言いようがない。

(三) また、本件において、包袋禁反言に該当するような事情はない。

(1) 被告が主張する、原告が本件実用新案権の無効審判手続で提出した実験報告書(甲第四二号証)は、「中間位置」では「上昇力」が弱いことを説明するために作成されたものであり、右報告書にいう試料No.2の付加パイプの位置を「中間」と定義するために作成されたものではない。言い換えれば、試料No.1も試料No.2もバネはベッド半体の前端・後端に張架したものであるが、その張架位置を最外端に移動すればするほど優れた上昇力を発揮することを証明し、もって無効審判請求事件で提出された証拠との相違を証明しようとしたものである。

(2) また、本件考案の無効審判事件において、「審尋結果」に記載された「請求項6及び請求項8における『先端』とは前ベッド半体の先端であり、『後端』とは後ベッド半体の先端をいう。」との被請求人(原告)の陳述は、例えば昭和五三年第一四九四五二号公開特許公報の第4図に記載されたバネ12の張架位置(ベッド半体の中間)等の先行技術との違いを明らかにしたものであり、「前端」、「後端」の意義を限定するような意味合いはない。「前端」、「後端」を「先端」と言い換えたからといって、例えばそれを、技術内容とは無関係に「ベッド半体の広がりが尽きる最も端の部分」というような限定的な意味に解釈しなければならない合理的な理由はない。

2 被告商品について

被告商品の付勢バネ7は、バネ取付部材18の一端が揺動可能に係合された枠体2、3の係合点と支持脚4との間に張架されていると解すべきである。そして、被告商品における右係合点は枠体2の前端縁から約一一五ミリメートル、枠体3の後端縁から約一三五ミリメートルだけ内側に入った位置の両側縁であるから、前記1で述べたところからすれば、右位置は、それぞれ枠体2の「前端」、枠体3の「後端」であると解すべきである。

3 したがって、被告商品は本件考案の構成要件Dを充足する。

【被告の主張】

1 本件考案の構成要件Dにいう「前端」、「後端」の意義について

本件考案にいう「前端」及び「後端」の意義は、文字通り、前端とは「前の端」を、後端とは「後の端」を指すものと解釈すべきである。

(一) 明細書の記載からの解釈

本件公報の段落【0019】には、「後ベッド半体3の前端部と前ベッド半体2の後端部を持ち上げて、……第1引張バネ33は前ベッド半体2の裏面2aの側に、第2引張バネ34は後ベッド半体3の裏面3a側に、夫々配置され、前者は前ベッド半体2の前端(固定支持脚16)と中間支持脚12(の下端縁)との間に張架され、また、後者は後ベッド半体3の後端又はベッド収納部1と、中間支持脚12(の下端縁)との間に張架されている」と開示されている。そこでは、前端部と前端、後端部と後端を使い分けをしており、また、前端は固定支持脚16のことであり、後端はベッド収納部1のことであると明示されていることによって、その図面と併せ考える時、前端とは文字通り前の端であり、後端とは後の端であると解さざるを得ない。

ちなみに、大辞泉(小学館)及び広辞苑(第四版)によると、前端とは「まえのはし」のことであり、後端とは「うしろのはし」のことである。

(二) 出願経緯からの解釈

(1) 本件実用新案権は、無審査によるものであり、かつ、多項制を採用している。そもそも多項制のクレームは、クレームの補正を制限し、その結果、実施例と同様の技術についてまでもクレームすることができる制度であり、本件考案についていえば、請求項1ないし3のクレームが仮に無効となっても請求項6ないし8のクレームを生かすことによって出願人の権利を認めるとともに、審査の促進に寄与しようとするものである。本件の場合は、まさに、請求項6及び8以外は削除又は無効となったが、請求項6及び8のみ生き残ったものである。右の経緯から見て、本件実用新案権の請求項6はまさに本質的部分であり(最高裁判所平成一〇年二月二四日判決参照)、均等の許されない事項であり、拡張を認めることはできない。

(2) 原告は、本件実用新案権の無効審判請求事件において、実験報告書(甲第四二号証)を提出したが、この実験によると、ベッドの先端及び後端にバネを張架した場合(試料No.1)とベッドの先端から一九五ミリメートルの位置及びベッドの後端から一五〇ミリメートルの位置にそれぞれパイプを渡し、その部分にバネを張架した場合(試料No.2)とを比較して、中央部の引き上げに要する力が、試料No.1は一・五キログラムであるのに対し、試料No.2は三・二キログラムであるとしている。

右に基づき、原告は特許庁において、「バネ端が各ベッド半体の前後端に取付けられている試料No.1のものは軽く、端部ではないパイプに一端が取り付けられている試料No.2のものは重い。よって、本件考案のように端部にバネを取り付けたものは効果があり、進歩性を有している。」と主張した。したがって、審決も、「請求項6に係る考案の『前ベッド半体2の前端』及び『後ベッド半体3の後端』、並びに請求項8に係る『前ベッド半体2の前端』とは、各ベッド半体の先端を指すものと解すべきである(なお、……)」と認定した上で、本件公報の記載を援用して、「楽に手で折り畳むことができるように有効に補助してくれる。」と認定したのである。

このように、原告は、特許庁において、進歩性を主張するために実験報告書を提出して右のような主張をし、これが入れられて本件実用新案権が有効であると判断されているのであるから、これに反する主張をすることは許されない(包袋禁反言)。

(三) 公知技術からの解釈

(1) 本件実用新案権出願前に、次の公知技術が存在する。

<1> 昭和五四年第四九二〇九号公開実用新案公報「折りたたみベッド」右によると、スプリング4は、床取付金物1と、中間折曲部近傍部間のベッド台2の側面に取り付けられている。

<2> 昭和五三年第一四九四五二号公開特許公報「収納ベッド」

右によると、バネ12端は中間回転軸10の下端部と、化粧支持板9及びベッド本体2の収納箱3の近傍部付近に取り付けられている。

右(1)、(2)とも、そのバネによって折り畳みの際の上昇力を付与しているものである。

(2) したがって、右の公知技術の存在にかかわらず、本件考案が有効であるとすると、本件考案の解釈については、公知技術を含まないように解釈しなければならない。

そうであるならば、右請求項6及び8は、それぞれ、その文字通りのものに限定しなければならない。

2 被告商品について

被告商品は、第1引張バネ、第2引張バネは、それぞれ前端又は後端に及んでいないことは明らかであるから、本件考案の要件を充足していない。

3 よって、被告商品は、本件考案の構成要件Dを充足しない。

二  争点二(被告商品は原告商品の形態を模倣したものといえるか)について

【原告の主張】

1 原告は、平成六年一二月一四日ころから、原告商品の販売を開始し、現在までこれを継続しているが、被告商品は、原告商品の形態を模倣したものである。

2(一) 不正競争防止法二条一項三号の模倣といえるためには、<1>他人の商品にアクセスすること、<2>結果の実質的同一性、が判断の要素として挙げられるが、ここにいう、結果の同一性については、同種の商品間における商品の形態を比較して実質的に同一であるかどうかが判断の基準となる。そして、実質的同一の範囲にあるかどうかについては、両商品の形態を比較し、物理的に同一である部分が商品の形態全体から見て重要な意味を有する部分か否かによって判断され、実際に市場に出された商品が有する形状、模様、色彩等を総合的に判断することが必要である。

また、例えば形態が変化する点に特徴がある商品であって、その形状が変化する態様、形状を変化させるための物理的手段が商品の形態全体からみて重要な意味を有する場合には、これらの形状の変化に関係する特徴も商品の「形態」に含まれる要素となると解すべきである。したがって、そのような形状の変化が重要な意味を有する商品の「形態」に関しては、形状が変化する態様、形状を変化させる物理的手段等の要素が「同種の商品が通常有する」ものであるかどうか、並びにこれらの要素を考慮した上で実質的に同一かどうかについて判断すべきであると解される。

(二) 原告商品は、単なる折り畳めるベッドではなく、布団を載せたまま片手で簡単に持ち上げて、倒立V字型に折り畳むことができ、使用時には簡単に水平展開してベッドの形状に復することができる点に商品としての最も重要な特徴があり、明らかにこのような形状の変化の態様等が商品としての重要な外見的要素を成している。

原告商品の形態の主要な特徴は次のとおりである。

(1) 前ベッド半体と後ベッド半体を備え、前ベッド半体と後ベッド半体を、水平展開自在、かつ、前ベッド半体の裏面側と後ベッド半体の裏面側が相互に近接する倒立V字型に折り畳み自在として枢着してある。

(2) 前ベッド半体の前端部及び後ベッド半体の後端部にそれぞれ支脚を設けるとともに、前ベッド半体と後ベッド半体の枢着部の下方にその全長にわたる幅広U字状の中間支持脚を設けてある。

(3) 引張バネ(付勢バネ)が、前ベッド半体の前端と中間支持脚の下端部との間及び後ベッド半体の後端と中間支持脚の下端部との間にそれぞれ張架してあり、これにより、水平展開状態近くで比較的大きな上昇力を生じて楽に手で折り畳むことができるように補助してくれる。

(4) 折り畳んだ状態では側面視倒立V字型となる。

(5) ベッドを倒立V字型に折り畳んだ状態で移動可能とする車輪(キャスター)を、ベッドを折り畳んだ状態で底面となる部分に設けてある。

(6) 前ベッド半体と後ベッド半体の各マットレスの上側表面には、グレー色をし、かつ、キルト状の生地を主体として用いている。

(三) 他方、被告商品についても、その商品の外見的要素の一つとして、布団を載せたまま片手で簡単に持ち上げて、倒立V字型に折り畳むことができ、使用時には簡単に水平展開してベッドの形状に復することができるという点があり、かつ、この点が商品としての最も重要な特徴を成している。

原告商品の前記特徴と対応する被告商品の形態は次のとおりである。

(1) 枠体2と枠体3を備え、枠体2と枠体3を、水平展開自在、かつ、枠体2の裏面側と枠体3の裏面側が相互に近接する倒立V字型に折り畳み自在として枢着してある。

(2) 枠体2の前端部及び枠体3の後端部にそれぞれ支脚を設けるとともに、枠体2と枠体3の枢着部の下方にその全長にわたる幅広U字状の中間支持脚を設けてある。

(3) 引張バネ(付勢バネ)が、枠体2の前端と中間支持脚の下端部との間及び枠体3の後端と中間支持脚の下端部との間にそれぞれ張架してあり、これにより、水平展開状態近くで比較的大きな上昇力を生じて楽に手で折り畳むことができるように補助してくれる。

(4) 折り畳んだ状態では側面視倒立V字型(山折状)となる。

(5) ベッドを倒立V字型に折り畳んだ状態で移動可能とする車輪(キャスター)を、ベッドを折り畳んだ状態で底面となる部分に設けてある。

(6) 枠体2と枠体3の各マットレスの上側表面には、グレー色をし、かつ、キルト状の生地を主体として用いている。

(四) 右に述べた原告商品の形態の特徴と被告商品の形態の特徴を比較すれば明らかなように、原告商品の前ベッド半体と被告商品の枠体2、原告商品の後ベッド半体と被告商品の枠体3とはそれぞれ同じであるから、結局、両者は実質的に同一であり、したがって、被告商品は、原告商品の形態全体から見て重要な意味を有する部分をことごとく模倣したものである。

3 前記のとおり、原告商品及び被告商品ば、形状が変化する点がその形態全体から見て重要な意味を有する商品である。すなわち、原告商品と被告商品について「同種の商品」と認められるのは、折り畳み式ベッドであるとともに、その形態全体からみて重要な意味を有すると考えられる形状の変化に関係する要素として、人が手で容易にベッドの中央部分を持ち上げて、倒立V字型に折り畳むことができること、ベッドを折り畳んだ状態で簡単に移動させることができること等が挙げられる。原告商品の特徴のうち、(1)、(3)ないし(5)は、原告商品の形態において、形状の変化に関する要素を表しているとともに、これらの要素は、「同種の商品」である従来の折り畳み式ベッドには全く見られないものであり、「同種の商品が通常有する形態」でないことは明らかである。

さらに、被告が同種の商品として挙げる折り畳み式ベッドは、折り畳んだ状態(変化後の状態)が倒立V字型ではなく、ベッドの前端と後端を持ち上げたV字型のものがほとんどであり、前ベッド半体の裏面と後ベッド半体の裏面が相互に近接するように折り畳むことができるように構成されているものも、水平展開状態から片手で簡単に持ち上げて倒立V字型に折り畳むことは不可能であるし、その通常の方法においても、ベッドを折り畳む際には、前部支脚・後部支脚を前後ベッドの各裏面側に折り畳むことから倒立V字型に折り畳むことはあり得ない。原告商品や被告商品と比較すれば、その形状が変化する態様が全く異なるものであり、原告商品及び被告商品と「同種の商品」と認めることはできない。

【被告の主張】

1 商品の形態とは、視覚によって知覚される物の外観のことをいうが、被告商品の形態は、原告商品の形態と実質的に同一とはいえない。

なお、原告が原告商品の特徴として挙げる「比較的大きな上昇力を生じ」て「楽に手で折り畳むことができる」ことは、視覚によって認識される物の外観ではない。すなわち、原告商品の外観を見ても、上昇力の発生が視認できるわけではないし、楽に手で折り畳むことができるか否かは実際にベッドを動かしてみて初めて認識できることであり、これらはアイディアの作用効果を描写した記載である。原告が主張するように、右作用効果をも形態の要素に含めることは、結局、工業所有権法で保護されるべきアイディアを不正競争防止法の保護対象に取り込むことに他ならないのであり、立法趣旨を乖離した誤った解釈である。原告がその主張のとおり、右作用効果を「商品としての最も重要な特徴」と考えるのであれば、形態模倣に基づく損害賠償という法的手段をとること自体が失当である。

2 原告商品は折り畳みベッドである。ベッドとは寝台のことであり、寝台とは寝るために用いる台である。原告商品はこれを折り畳みにしたということである。

ところで、原告商品の構造は、

(一) 対向する一対の前後ベッド半体2、3と、

(二) 前後ベッド半体2、3を枢着した部分の下方に設けた中間支持脚12と、

(三) 前ベッド半体2の前端側に設けた固定支脚16と、

(四) 後ベッド半体3の後端位置に設けた支持台枠31と、

(五) 前後ベッド半体の各上面にそれぞれ載置したマット20、21と、

(六) 前ベッド半体2の背面部に設けた第一引張バネ33と後ベッド半体3の背面部に設けた第二引張バネ34と、

からなっている。

右(六)を除き、すべてを具備した折り畳み式ベッドがカタログないし広告に多数使用されている。換言すれば、右の(一)ないし(五)を有する折り畳み式ベッドはこの種折り畳み式ベッドにおいて通常有する形態であり、不正競争防止法二条一項三号により保護されるべきではない。

原告は、従前の折り畳みベッドは、水平状態から片手で簡単に持ち上げて倒立V字型に折り畳めるという機能がなく、したがって、通常の用法では倒立V字型に折り畳むことができないと主張するが、ベッドを「片手で簡単に持ち上げ」られることは、前述のとおり、商品の外観として視覚で認識できる事項ではないから、商品の形態ではない。

3 被告商品は、他社の販売する製品から考えついたものであり、原告商品を見て考えついたものではない。したがって、「模倣」の要件を充足しない。

三  争点三(損害)について

【原告の主張】

被告は、被告商品の輸入及び販売が、本件実用新案権の侵害行為及び不正競争行為となることを知りながら又は過失によりこれを知らないで、被告商品を販売した。

被告商品の純利益は、一台当たり二二三九円を下ることはないから、被告は被告商品の販売により、少なくとも一億一七八七万五〇〇〇円の利益を得た。

右金額は原告の損害額と推定される。

【被告の主張】

被告商品の販売による純利益は、一台当たり二三三円であるから、被告商品の販売により被告が得た利益は、一六八七万一〇六四円である。

第五  当裁判所の判断

一  争点一(実用新案権侵害)について

1  本件考案の構成要件Dにおける前ベッド半体の「前端」及び後ベッド半体「後端」の意義について

(一) 本件考案の構成は、そこで引用されている本件実用新案権の請求項1の構成と併せ読めば、「前ベッド半体2及び後ベッド半体3を備え、上記前ベッド半体2と後ベッド半体3を、水平展開自在、かつ該前ベッド半体2の裏面2a側と該後ベッド半体3の裏面3a側が相互に近接する倒立V字型に折畳み自在として、枢着すると共に上記倒立V字型の方向へ折畳まれるように弾発付勢する、一対の第1・第2引張バネ33、34からなる弾発部材Sを設け、第1引張バネ33は前ベッド半体2の前端と中間支持脚12の間に張架され、かつ、第2引張バネ34は後ベッド半体3の後端と中間支持脚12の間に張架されたことを特徴とするベッド。」であるということができる。

(二) 本争点は、右構成のうちの前記第二の二2(三)記載の分説における構成要件D中の、バネの張架位置に関する「第1引張バネ33は前ベッド半体2の『前端』と中間支持脚12の間に張架され、かつ、第2引張バネ34は後ベッド半体3の『後端』と中間支持脚12の間に張架され」という要件における前ベッド半体2の「前端」及び後ベッド半体3の「後端」が、本件考案の対象品である折り畳みベッドのいかなる部分を指すものと解すべきかにある。

この点、原告は、本件考案における前ベッド半体2の「先端」及び後ベッド半体3の「後端」とは、各ベッド半体の起端、中間部分を除いた一定の範囲の位置を指すものであると主張し、これに対して被告は、文字通り、前端とは前ベッド半体2の前の端を、後端とは後ベッド半体3の後の端を指すものと解釈すべきである旨主張する。

(三) そこでまず、本件公報において、前ベッド半体2の「前端」及び後ベッド半体3の「後端」がいかなる意味内容で使用されているかを検討すると、甲第一号証の二によれば、本件公報において、バネ張架位置にかかる前ベッド半体2の「前端」及び後ベッド半体3の「後端」に関する記載については、次のとおりであり、その余の記載は存在しないことが認められる。

(1) 【課題を解決するための手段】における、「弾発部材が一対の第1・第2引張バネから成ると共に、第1引張バネは前ベッド半体の前端と中間支持脚の間に張架され、かつ、第2引張バネは後ベッド半体の後端と中間支持脚の間に張架される。」との記載(段落【0007】)

(2) 【実施例】における、「第1引張バネ33は前ベッド半体2の裏面2a側に、第2引張バネ34は後ベッド半体3の裏面3a側に、夫々配設され、前者は前ベッド半体2の前端(固定支脚16)と中間支持脚12(の下端縁)との間に張架され、また、後者は後ベッド半体3の後端又はベッド収納部1と、中間支持脚12(の下端縁)との間に張架されている。」との記載(段落【0019】)

(3) 図1、図3ないし図5の記載(なお、右各図面は、いずれも前ベッド半体及び後ベッド半体の先端部分と中間支持脚との間にバネが張架されている図が記載されている。)

右各記載から明らかなとおり、本件公報における、バネの張架位置に関する前ベッド半体2の「前端」及び後ベッド半体3の「後端」についての記載からは、実施例の図面においてバネが張架されている位置である各ベッド半体の先端部分が含まれることは明らかであるが、その部分を超えて、前ベッド半体及び後ベッド半体の一定の範囲を有する部分を指すものか、あるいは先端部分のみを指すものか明らかではないといわざるを得ない。

そこで、本件公報の他の記載を検討すると、前掲甲第一号証の二によれば、本件公報には、支持台枠31の位置を「ベッド全体の後端位置」としていること、「下端縁」あるいは「左右側縁部」という用語が用いられていることが認められ、このことからすると、縁の部分を特定して指す場合には特別の用語を使用していると解する余地もなくはない。他方、同号証によれば、本件公報には、前ベッド半体及び後ベッド半体の一定部分を指す場合に「前端部」及び「後端部」、あるいは「前端側」及び「後端側」という用語が用いられている部分もあることが認められ、一定の範囲の広がりを持つ部分を指す場合には右のような用語を使用していると解する余地もあるというべきである。そうすると、つまるところ、本件公報の記載からは、前ベッド半体2の「前端」及び後ベッド半体3の「後端」が、一定の広がりを持つ部分を指すのか、それぞれの先端部分を指すのかは明確ではないといわざるを得ない。

(四) そこで次に、本件実用新案権の無効審判請求事件の手続経緯についてみると、甲第四二号証、乙第一号証の一及び乙第五二ないし第五四号証並びに弁論の全趣旨によれば、本件実用新案権について被告が申し立てた平成九年審判第四〇〇三一号無効審判請求事件において、請求人である被告は、昭和五四年第四九二〇九号公開実用新案公報、昭和五三年第一四九四五二号公開特許公報ほかを先行公知技術として提出し、本件実用新案権における考案は、先行技術と同一又はそれらに基づいて当業者が極めて容易に考案できたものであるとして、本件実用新案権は無効であるとの審決を求めていること、被請求人である原告は、本件における甲第四二号証の実験報告書を提出する等してこれに反論していること、また、被請求人である原告は、右事件の審判廷において、「『前端』とは前ベッド半体の先端であり、『後端』とは後ベッド半体の先端をいう。」と陳述していることがそれぞれ認められる。

また、甲第四二号証によれば、右事件における被請求人である原告が特許庁に提出した実験報告書は、原告商品に何ら改変を加えないもの、すなわち、バネを中間支持脚と前ベッド半体の先端部分及び中間支持脚と後ベッド半体の先端部分にそれぞれ張架した折り畳み式ベッド(試料No.1)と、原告商品の中間支持脚と平行に、かつ、枠体を横断するように、前ベッド半体の先端位置から一九五ミリメートルの位置及び後ベッド半体の先端位置から一五〇ミリメートルの位置にそれぞれパイプを取り付け、中間支持脚と右各パイプとの間にバネを張架した折り畳み式ベッド(試料No.2)とを用いて、その中央部を引き上げるのに要する力の大きさを比較したものであること、右実験結果においては、試料No.1は約一・五キログラムで引き上げられたのに対し、試料No.2では約三・二キログラムを要したこと、考察の欄において、試料No.1はバネ取付部材が係合された先端及び後端に付勢力が働くものであるのに対し、試料No.2のベッドに働くバネの付勢力の大きさ及び付勢力の働く位置は試料No.1とは全く異なると主張していることがそれぞれ認められる。

そして、前掲乙第五二号証によれば、右事件の審決では、本件考案については結論として請求人である被告の主張を退け、昭和五四年第四九二〇九号公開実用新案公報に開示されている考案とは、スプリングの個数及び張架位置が異なること、また、昭和五三年第一四九四五二号公開特許公報に開示されている発明は第1、第2引張バネを張架もているが、倒立V字型に折り畳み可能としたものでなく、ベッドの基本構造が相違するとともに、引張バネ自体の張架位置も、前後ベッド半体の前後端に張架したものではない点が相違し、この構成と他の構成とが相俟って、本件考案は「楽に手で折畳むことができるように有効に補助してくれる」という効果を奏するものであるとして、無効事由は存在しないと判断していること、また、審決書の末尾において、なお書きとして、本件考案の「前ベッド半体2の前端」及び「後ベッド半体3の後端」とは、各ベッド半体の先端を指すものと解すべきであると認定判断していること、さらに、本件実用新案権の請求項3ないし5の考案については、請求人である原告が提出した先行公知技術から当業者が極めて容易になし得るものであって、進歩性を欠如するものとして無効であると判断していることがそれぞれ認められる(なお、本件実用新案権の請求項3ないし5は、本件公報の記載より明らかなとおり、バネの張架位置についての構成上の特定はない。)。

右各事実を総合すると、原告は、無効審判請求事件において、本件考案における前ベッド半体2の「前端」及び後ベッド半体3の「後端」とは、それぞれの先端部分であると主張して、それによる顕著な効果を立証し、これを受けて、審決において本件考案における右バネの張架位置が先行公知技術と相違するものと認められて、請求人である被告が主張する進歩性欠如の無効事由が存在しないものと判断されたものと解さざるを得ない。

(五) この点原告は、原告が本件実用新案権の無効審判手続で提出した甲第四二号証の実験報告書は、「中間位置」では「上昇力」が弱いことを説明するために作成されたものであり、右報告書にいう試料No.2の付加パイプの位置を「中間」と定義するために作成されたものではないと主張し、甲第四三号証の陳述書を提出して、試料No.1と試料No.2のバネ張架位置はいずれもベッド半体の「先端」、「後端」に該当すると主張する。

しかし、前掲甲第四二号証によれば、その考察の欄において、右実験報告書における試料No.1はバネ取り付け位置を前ベッド半体の「前端」及び後ベッド半体の「後端」とした場合のものであり、これに対する対照試料として試料No.2を位置付けていることは明らかであるから、原告の主張を採用することはできない。

(六) したがって、本件考案にいうバネ張架位置である前ベッド半体の「前端」及び後ベッド半体の「後端」とは、それぞれ前後ベッド半体の先端部分を指すものと解釈するのが相当である。

2  被告商品は、別紙(一)の記載からも明らかなように、バネはバネ補助部材を介して、前ベッド半体の先端部分から一一五ミリメートルの位置と中間支持脚との間、及び後ベッド半体の先端部分から一三五ミリメートルの位置と中間支持脚の間にそれぞれ張架されているから、前ベッド半体及び後ベッド半体の先端部分に張架されているということはできず、本件考案にいう前ベッド半体2の「前端」及び後ベッド半体3の「後端」にバネを張架しているということはできない。

3  したがって、被告商品は、本件考案の構成要件Dを充足しない。

二  争点二(不正競争防止法違反)について

1  被告商品の形態は、別紙(一)記載のとおりであることに当事者間に争いはなく、甲第二号証及び検乙第三号証によれば、その具体的態様は、別紙被告商品形態目録記載のとおりであると認められる。これに対し、原告商品の形態は、別紙(二)記載のとおりであることは当事者間に争いはなく、甲第三号証及び検甲第三号証によれば、原告商品の具体的態様は、別紙原告商品形態目録記載のとおりであると認められる。

2  ところで、不正競争防止法二条一項三号にいう「形態」とは、物の外観上の態様すなわち形状、模様、色彩等を指し、「模倣」とは、既に存在する他の商品をまねてこれと同一又は実質的に同一の形態の商品を作り出すことをいうものと解すべきである。そして、ここでいう実質的に同一の形態とは、作り出された商品の形態が既に存在する他人の商品の形態と相違するところがあっても、その相違がわずかな改変に基づくものであって、酷似していると評価できるような場合をいい、その判断においては、当該改変の着想の難易、改変の内容・程度、改変による形態的効果等を総合的に検討し、また、当該商品の種類、用途などに応じて、取引者・需要者の観点(取引者・需要者が他人の商品と同一ないし酷似していると認識するか否か)をも考慮すべきである。

本件では、折り畳みベッドの形態が問題とされているところ、乙第二ないし第四八号証から明らかなとおり、折り畳みベッドの分野においては、その基本的構成は近似する形態の商品が多く、取引者・需要者の観点からすれば、その商品の選択の場面においては、その基本的構成のみならず、当該商品の色彩や材質感、装飾等について比較検討するものと考えられるから、当該商品が既に存在する他人の商品と同一又は実質的に同一の形態であるか否かについても、これらの各点を総合して判断すべきものと解するのが相当である。

3  そこで、被告商品と原告商品の形態を比較すると、次のとおりの類似点及び相違点が認められる。

(一) 類似点

(1) 前ベッド半体及び後ベッド半体からなり、ベッドの枠部分は金属製パイプで形成されていること

(2) 大きさが、シングルサイズでは、原告商品が長さ一九八〇ミリメートル、幅九一〇ミリメートル、被告商品が長さ二〇〇〇ミリメートル、幅九〇〇ミリメートルとほぼ同一であり、マット面までの高さは共に二七〇ミリメートルであること。なお、ダブルサイズは、長さ及びマット面の高さはいずれもシングルサイズと同様であるが、幅は、被告商品が一〇四〇ミリメートル、原告商品が一〇六〇ミリメートルである。

(3) 背面にバネを張架してあること

(4) 前部脚部及び後部脚部にキャスターが取り付けられていること

(5) ベッドの中央下部に、幅広U字型の中間支持脚が設けられていること

(6) 折り畳んだ際には、前端部及び後端部が下となり、ベッド中央部分が上となる、いわゆる山折り型(倒立V字型)となること

(7) マットの色調が、灰色基調のキルト状の生地に黒色の装飾が施されていること

(8) ベッド側面に、把手部が取り付けられていること

(二) 相違点

(1) ベッド前部及び後部のパイプの形状について

被告商品のパイプは、前部はU字型の部材を伏せた形状であり、上部のパイプに接合するように漢字の山型に細いパイプで装飾を施してある。また、後部はU字型を伏せた形状である。

これに対して原告商品のパイプは、前部は半円状の部材を伏せた形状であり、後部には装飾は設けられていない。

(2) 脚部の形状(キャスターの配置)

被告商品の脚部の形状は、前部はそれぞれ前部パイプの下端がそのまま脚部となり、脚部の側面にそれぞれ二個のキャスターが付されている。なお、前部パイプの上部中央にもキャスターが一個付されている。後部は、後部パイプの下端がそのまま脚部となり、脚部の終端に直接キャスターが付されている。

これに対して原告商品の脚部の形状は、前部はそれぞれ前部の下端がそのまま脚部となり、脚部の終端に直接キャスターが付されている。後部は、後部左右側面枠にそれぞれ略五角形の支持脚台を枢着し、これに前後方向に水平杆を渡し、その両端にそれぞれ一つずつ、左右合計で四個のキャスターが付されている。

(3) 色彩、マットの柄

被告商品は、明るい紫色がかった灰色のキルティング地に、前ベッド半体前部及び後ベッド半体後部に略五角形の黒色飾りを付している。また、パイプ部分の色彩は灰色である。

原告商品は、被告商品より濃い色調の紺色がかった灰色のキルティング地に、前ベッド半体及び後ベッド半体の四隅にそれぞれ略三角形の黒色飾りを付している。また、パイプ部分の色彩は黒色である。

(三) これらの類似点及び相違点を総合して検討すると、前記のとおり、このようなパイプを用いたベッドにおいては、その基本的形状は類似しており、前掲乙第二ないし第四八号証によれば、特に前ベッド半体及び後ベッド半体からなり、枠体部分が金属製であること、あるいは脚部にキャスターが付されていることは、この種折り畳みベッドにおいては共通する態様であることが認められる。また、大きさの点については、ベッドという商品の性質上、各商品において大同小異にならざるを得ないのであって、この点をもって両商品の形態が類似するということができないのはいうまでもない。そうすると、原告商品と被告商品の類似する点は、背面にバネが張架されていること、折り畳んだ際の形状として、ベッド前部及び後部が下に、中央部分が上になった態様となること、側面に把手部が配置されていることにあるということ、マット部分の全体的色調が類似することにあるということになる。これに対して、相違点を見ると、ベッド前部及び後部のパイプ及びその装飾の形状、脚部やキャスターの配置形状、特にベッド後側の脚部の形状が大きく異なり、マットの装飾模様及びパイプの色彩が異なることとなる。前記のとおり、折り畳み式ベッドの基本的形状が類似することからすると、前部、後部のパイプやその装飾、脚部の形状といった細部のデザインの相違は、この種物品においては軽視できないものと解するのが相当であるが、そうすると、被告商品と原告商品とは、これらの部分が大きく異なり、また、パイプ及びキルティングの色彩が異なることからベッド全体の色調も異なり、全体として異なる美観を生じるものというべきであり、実質的に同一の形態ということはできない。

甲第三一号証、第三八号証及び証人原島徹の証言中、右認定判断と異なる部分は採用できない。

4  この点、原告は、原告商品は形状が変化する点がその形状全体から見て重要な意味を有すると主張し、布団を載せたまま、人が手で容易にベッドの中央部分を持ち上げて倒立V字型に折り畳むことができること、ベッドを折り畳んだ状態で簡単に移動させることができることに基づく原告商品の形状が形態的特徴であると主張する。

しかし、不正競争防止法二条一項三号は、先行者が資金、労力を投下して商品化した商品の形態を、自ら資金、労力を投下することなく模倣する行為を不正競争行為とするものであり、その保護の対象とするものは形態それ自体であって、いわゆる商品のアイディアを保護の対象とするものではない。原告の主張のうち、中央部分を持ち上げて倒立V字型に折り畳むことができること、ベッドを折り畳んだ状態で簡単に移動させることができること自体は、商品の機能面におけるアイディアにすぎず、これを実現するための抽象的構成のみを抽出して当該商品の形態ということはできない。そして、右アイディアを実現するための構成を含めた原告商品及び被告商品の具体的形態は、前記のとおり実質的に同一ということはできないから、原告の主張は採用することができない。

5  したがって、被告商品の形態が原告商品の形態と実質的に同一ということはできないから、その余の点を判断するまでもなく、被告商品の形態が原告商品の形態を模倣したものであるということはできない。

三  よって、原告の請求はいずれも理由がない。

(平成一一年三月九日口頭弁論終結)

(裁判長裁判官 小松一雄 裁判官 高松宏之 裁判官 水上周)

(19)日本国特許庁(JP) (12)登録実用新案公報(U) (11)実用新案登録番号

第3003385号

(45)発行日 平成6年(1994)10月18日 (24)登録日 平成6年(1994)8月10日

(51)Int.Cl.A47C 17/52 19/12 議別記号 庁内整理番号 Z 9032-3K Z 9032-3K F1 技術表示箇所

評価書の請求 未請求 請求項の数8 FD

(21)出願番号 実願平6-5542

(22)出願日 平成6年(1994)4月20日

(73)実用新案構者 594047566

原島微

奈良県生駒市生駒台南223番地の2

(72)考案者 原島微

奈良県生駒市生駒台南223番地の2

(74)代理人 弁理士 中谷武嗣

(54)【考案の名称】 ベッド

(57)【要約】

【目的】 前後ベッド半体に布団を載せたままスムースに収納・展開できる析畳式ベッドを提供する。

【構成】 前ベッド半体2及び後ベッド半体3を備える。支持台枠31に後ベッド半体3の後靖部を上下揺動自在に枢着する。前ベッド半体2と後ベッド半体3を、水平展開自在かつ前ベッド半体2の裏面2a側と後ベッド半体3の裏面3a側が相互に近接する倒立V字型に折畳み自在として、枢着する。弾発部材Sを設けて、倒立V字型に折畳まれる方向へ弾発付勢させる。

<省略>

【実用新案登録請求の範囲】

【請求項1】 前ベッド半体2及び後ベッド半体3を備え、上記前ベッド半体2と後ベッド半体3を、水平展開自在、かつ該前ベッド半体2の裏面2a側と該後ベッド半体3の裏面3a側が相互に近接する倒立V字型に折畳み自在てして、枢着すると共に上記倒立V字型の方向へ折畳まれるように弾発付勢する弾発部材Sを設けたことを特徴とするベッド。

【請求項2】 ベッド收納部1を備え、該ベッド収納部1に。後ベッド半体3の後端部を上下揺動自在に枢着した請求項1記載のベッド。

【請求項3】 後端位置に支持台枠31を備え、後ベッド半体3の後端部を上下揺動自在として該支持台枠31に枢着した請求項1記載のベッド。

【請求項4】 前ベッド半体2の後端側の左右側縁部に、左右一対の把手15、15を付設した請求項1、2又は3記載のベッド。

【請求項5】 前ベッド半体2の前端部に、固定支脚16を垂設すると共にその下端に車輪17を設けた請求項1、2、3又は4記載のベッド。

【請求項6】 弾発部材Sが一対の第1・第2引張バネ33、34から成ると共に、第1引張バネ33は前ベッド半体2の前端と中間支持脚12の間に張架され、かつ、第2引張バネ34は後ベッド半体3の後端と中間支持脚12の間に強架された請求項1記載のベッド。

【請求項7】 弾発部材Sが一対の第1・第2引張バネ33、34から成ると共に、第1引張バネ33は前ベッド半体2の前端と中間支持脚12の間に張架され、かつ、第2引張バネ34はベッド収納部1と中間支持脚12の間に張架された請求項2記載のベッド。

【請求項8】 弾発部材Sが一対の第1・第2引張バネ33、34から成ると共に、第1引張バネ33は前ベッド半体2の前端と中間支持脚12の間に張架され、かつ、第2引張バネ34支持台枠31と中間支持脚12の間に張架された請求項3記載のベッド。

【図面の簡単な説明】

【図1】本考案の一実施例を示す斜視図である。

【図2】ベッドの収納状態を示す斜視図である。

【図3】要部側面図である。

【図4】他の実施例の斜視図である。

【図5】折畳状態の斜視図である。

【図6】カバーを使用した説明図である。

【符号の説明】

1 ベッド収納部

2 前ベッド半体

2a 裏面

3 後ベッド半体

3a 裏面

4 前面部

15 把手

16 固定支脚

17 車輪

31 支持台枠

33 第1引張バネ

34 第2引張バネ

S 弾発部材

【図1】

<省略>

【図2】

<省略>

【図3】

<省略>

【図4】

<省略>

【図5】

<省略>

【図6】

<省略>

【考案の詳細な説明】

【0001】

【産業上の利用分野】

本考案は折畳可能なベッドに関する。

【0002】

【従来の枝術】

従来、前ベッド半体及び後ベッド半体を備え、この前ベッド半体と後ベッド半体を、水平展開自在かつ該前ベッド半体の表面側と該後ベッド半体の表面側が相互に近接するV字型に折畳み自在として、枢着したベッドがある。

【0003】

【考案が解決しようとする課題】

しかし、このような構造のベッドでは、折畳みの際の前後ベッド半体の待ち上げに、大きな力を必要とし、しかも、布団を前ベッド半体と後ベッド半体に載せたまま、折畳むことができず、別の場所に布団を収納する必要があり、不便であった。

【0004】

そこで、本考案は従来のこのような問題点を解決して、布団を載せたままでも折畳が可能で、かつ、軽快に折畳みと展開の操作ができて、不使用時にコンパクト化できるベッドを提供することを目的とする。

【0005】

【課題を解決するための手段】

本考案は、上記目的を達成するために、前ベッド半体及び後ベッド半体を備え、上記前ベッド半体と後ベッド半体を、水平展開自在、かつ該前ベッド半体の裏面側と該後ベッド半体の裏面側が相互に近接する倒立V字型に折畳み自在として、枢着すると共に上記倒立V字型の方向へ折畳まれるように弾発付勢する弾発部材を設けたベッドである。

【0006】

また、ベッド収納部を備え、該ベッド収納部に、後ベッド半体の後端部を上下揺動自在に枢着した。また、後端位置に支持台枠を備え、後ベッド半体の後端部を上下揺動自在として該支持台枠に枢着した。また、前ベッド半体の後端側の左右側縁部に、左右一対の把手を付設した。また、前ベッド半体の前端部に、固定支脚を垂設すると共にその下端に車輪を設けた。

【0007】

そして、弾発部材が一対の第1・第2引張バネから成ると共に、第1引張バネは前ベッド半体の前端と中間支持脚の間に張架され、かつ、第2引張バネは後ベッド半体の後端と中間支持脚の間に張架れる。また、第2引張バネは、ベッド収納部若しくは支持台枠と、中間支持脚の間に張架される。

【0008】

【作用】

ベッドを使用しない場合は、後ベッド半体の前端と前ベッド半体の後端部を持ち上げて、前ベッド半体と後ベッド半体を折畳んで、ベッド収納部に収納する。このとき、前後ベッド半体は、側面視倒立V字型となるので、布団を載せたまま折畳むことができ、布団のずれも生じない。しかも、弾発部材が倒立V字型の方向へ折畳まれるように弾発付勢して、布団を載せたままでも軽快に前後ベッド半体を折畳まれるように助ける。

【0009】

ベッドを使用する場合は、ベッド収納部から前ベッド半体を手前に引き出して、前後ベッド半体を水平展開すればよい。このとき、前ベッド半体の把手を持てば、前ベッド半体を手前に簡単に引き出すことができる。さらに、この把手と前記弾発部材とによって、前後ベッド半体を折畳む際、後ベッド半体の前端部と前ベッド半体の後端部を一層軽快かつ簡単に持ち上げることができる。

【0010】

また、前後ベッド半体の展開及び折畳みの際、車輪が床等の載置面を転動して、前後ベッド半体等の重量が支持されるので、ベッド収納部に対してスムースに引き出し及び収納させることができる。

【0011】

【実施例】

以下、実施例を示す図面に基づいて本考案を詳説する。

【0012】

図1は、本考案に係るベッドを示し、このベッドは、折畳自在かつ収納式であって、ベッド収納部1と、前ベッド半体2及び後ベッド半体3を備えている。

【0013】

ベッド収納部1は、布張り部を有する鉛直状の箱型であって前面部4が開閉自在な収納枠体とされる。具体的には、ベッド収納部1の水平屋根部5は平板とされ、ベッド収納部1の左右側面部6、6及び後面部7は、布張り部とされる。この布張り部としては、不織布を用いこれに各種模様をつけて美観に優れたものとするのが好ましい。

【0014】

水平屋根部5の前端緑には、図1と図2の如く、開閉自在な左右一対のカーテン8、8が付設されて、前面部4をなしている。さらに、ベッド収納部1は、水平載置板9、9と、水平載置板9、9と水平屋根部5を連結する左右一対の鉛直状支柱10、10と、を備えている。なお、このベッド収納部1は、部屋の壁等に固定しても、しなくても、どちらでもよい。

【0015】

次に、図1と図3に示すように、ベッド収納部1の下端部近傍に、後ベッド半体3の後端部を上下揺動自在に枢着すると共に、前ベッド半体2と後ベッド半体3を、水平展開自在かつ前ベッド半体2の裏面2a側と後ベッド半体3の裏面3a側が相互に近接する側面視倒立V字型に折畳み自在として、枢着する。

【0016】

具体的には、前後ベッド半体2、3は、夫々、基枠やマット等にて全体が四角形の平版状に構成される。この後ベッド半体3の後端側の左右側縁部を、ベッド収納部1の支柱10、10の下端部近傍に、枢着具11にて枢着して、水平軸心A廻りに後ベッド半体3を揺動自在とする。

【0017】

さらに、後ベッド半体3の前端側の左右側縁部と、前ベッド半体2の後端側の左右側縁部を、中間支持脚12の左右側板部13、13に、枢着具14にて枢着して、水平軸心B廻りに前後ベッド半体2、3を揺動自在とする。

【0018】

また、前ベッド半体2の後端側の左右側縁部に、左右一対の把手15、15を立設し、前ベッド半体2の前端部に、左右一対の固定支脚16、16を垂設すると共に、その下端に車輪17を設ける。

【0019】

しかして、ベッドを使用しない場合は、後ベッド半体3の前端部と前ベッド半体2の後端部を持ち上げて、前後ベッド半体2、3を折畳んで、ベッド収納部1に収納する。このとき、前後ベッド半体2、3は、側面視倒立V字型となるので、布団20を載せたまま折畳むことができ、布団20のずれも生じない。この倒立V字型の方向へ折畳まれるように弾発付勢する弾発部材Sが設けられている。図1と図3の図例では、一対の第1・第2引張バネ33、34をもって弾発部材Sを構成している。第1引張バネ33は前ベッド半体2の裏面2a側に、第2引張バネ34は後ベッド半体3の裏面3a側に、夫々配設され、前者は前ベッド半体2の前端(固定支脚16)と中間支持脚12(の下端縁)との間に張架され、また、後者は後ベッド半体3の後端又はベッド収納部1と、中間支持脚12(の下端縁)との間に張架されている。

【0020】

上述のように、前後ベッド半体2、3と共に布団20を、ベッド収納部1に収納でき、別の場所に布団20を収納する必要がない。しかも、前後ベッド半体2、3をベッド収納部1に収納して、図2の如く、カーテン8、8を閉じておけば、外部からベッドが見えず見栄えがよい。図3の実線にて示した水平展開(使用)状態から僅かに起こして倒立V字型に折畳み始める時に大きな力Fを要するが、この力Fを、一対のバネ33、34が補助することとなる。故に、図3の実線及びその近傍にて最も大きい引張弾発力を発揮させれば十分であり、図3中の仮想線では弱い引張力でも良い(乃至零でも良い)。

【0021】

ベッドを使用する場合は、図1と図3に示すように、カーテン8、8を開いて、ベッド収納部1から前ベッド半体2を手前に引き出して展開すればよく、中間支持脚12と、固定支脚16、16及び車輪17、17と、ベッド収納部1にて、前後ベッド半体2、3が水平に支持される。

【0022】

このとき、前ベッド半体2の把手15、15を持てば、前ベッド半体2を手前に簡単に引き出すことができ、また、前後ベッド半体2、3を折畳む際も、後ベッド半体3の前端部と前ベッド半体2の後端部を簡単に持ち上げることができる。このとき弾発部材Sが矢印F方向の持ち上げ力を発生して、助けてくれるので一層楽に折畳みできる。

【0023】

さらに、前後ベッド半体2、3の展開及び折畳みの際、車輪17が床等の載面19を転動して、前後ベッド半休2、3等の重量が支持されるので、ベッド収納部1に対してスムースに引き出し及び収納させることができ、かつ、ベッド収納部1が手前に倒れない。

【0024】

なお、図例では、前ベッド半体2の前端部に枕止め枠18が立設されているが、後ベッド半体3の後端部に立設してもよく、さらに、前ベッド半体2側に人の頭がくるように使用するも、後ベッド半体3側に人の頭がくるように使用するも自由である。

【0025】

次に、図4と図5は他の実施例を示し、まず、前述の実施のベッド収納部1を省略し、代わりに、支持台枠31をベッド全体の後端位置に設けている。この支持台枠31は、2個の車輪35、35を有する前後方向の水平杆36と、それを左右連結する横杆37とを備えており、後ベッド半体3の後端部を上下揺動自在に枢着(受支)している。

【0026】

さらに、弾発部材Sを構成する第1引張バネ33は前述の実施例と同様であるが、第2引張バネ34は、支持台枠31(の横杆37)と中間支持脚12の下端縁との間に張架されている。

【0027】

そして、前ベッド半体2のさらに前半部2bが支軸38廻りに上下揺動して、図4のように起伏可能であり、かつ、この支軸38にラチェット機構を設けて、所定小角度ずつ起伏して傾斜角度を調整可能である。

【0028】

図4の状態から、前半部2bを水平にもどし、その後、(図4から)図5のように手で力Fを与えて、倒立V字型に折畳むが、この時、第1・第2引張バネ33、34の弾発力にて、及び、車輪17、35の回転にて、軽快・簡易に、折畳みできる。その後、図6のように、カバー39を被覆するも望ましい。

【0029】

【考案の効果】

本考案は上述の如く構成されているので、次に記載するような著大な効果を奏する。

【0030】

請求項1記載のベッドによれば、ベッドを使用しない場合に、前ベッド半体2と後ベッド半体3を折畳んで鉛直にコンバクトに立てることができて、部屋を広く使える。子供部屋や学生の部屋等に好適である。しかも、前後ベッド半体2、3は、側面視倒立V字型に折畳まれるので、前後ベッド半体2、3に布団20を載せたまま収納・展開することができ、収納・展開の際に布団20がずれたりしない。特に、布団20が拡がる方向の力を(自重によって)受けるので、形くずれを生じず、しわもよりにくい。従って、別の場所に布団20を収納する必要がなく、布団収納のための手間とスベースを省くことができる。

【0031】

しかも、弾発部材Sによって軽快・迅速に折畳むことができ、例えば、5~10kgにも達する布団を敷いたままにて、(図1・図4から図3の仮想線・図5のように、)容易・円滑に折畳みできる。

【0032】

(請求項2によれば、)ベッド収納部1内に見映え良く収納できる。(請求項3によれば)構造が簡素化できると共に、一層場所をとらない。

【0033】

(請求項4によれば、)把手15、15を使用することにより、前ベッド半体2を手前に簡単に引き出して展開でき、かつ、後ベッド半体3の前端部と前ベッド半体2の後端部を簡単に持ち上げて折畳みでき、収納・展開をスムースかつ楽に行える。

【0034】

(請求項5記載のベッドによれば、)前後ベッド半体2、3の展開及び折畳みの際、前後ベッド半体2、3等の重量を支えつつ車輪17が床等の載面19を転動するので、軽い力でスムースに収納・展開させることができ、ベッド収納部1が手前に倒れてくることがなく安全である。

【0035】

(請求項6・7・8によれば、)安価に製作できると共に、水平展開状態近くで比較的大きい上昇力Fを生じて、楽に手で折畳むことができるように有効に補助してくれる。

別紙(一)

イ号物件説明書

一 物件の種別

折り畳みベッド

二 図面の説明

第1図 展開状態を示す正面図

第2図 展開状態を示す背面図

第3図 展開状態を示す平面図

第4図 展開状態を示す底面図

第5図 展開状態を示す右側面図

第6図 展開状態を示す左側面図

第7図 A-A断面図

第8図 折り畳んだ状態を示す正面図

第9図 折り畳んだ状態を示す背面図

第10図 中央断面図

第11図 展開状態を示す正面図(寸法図)

第12図 展開状態を示す底面図(寸法図)

第13図 展開状態を示す底面図(寸法図)(ワイドサイズ)

三 符号の説明

1 折り畳みベッド 2、3 枠体

4 支持脚 5 前脚枠

6 後脚枠 7 付勢バネ

8、9、10 キャスター 11 支持突起

11a 支持突起11の円弧面 12 車輪

13 逆U字型把手 14 取付け板

15 保持パイプ 16 テーブル等

17 保持パイプ 18 バネ取付部材

19 把手(枠体3の側部)20、21 マット

四 構造及び作用の説明

(構造)

折り畳みベッド1の基本的な構成は

略U字型をなして対向する一対の前後枠体2、3と、

これら枠体2、3の開放側両端を上部に枢着した中央部支持脚4と、

該枠体2、3の両側部に取付けたコ字状前後脚枠5、6と、

該枠体2、3の上面にそれぞれ載置したマット20、21と、

枠体2、3の背面部に設けた付勢バネ7とからなる。

前記前脚枠5の横幅は、後脚枠6の横幅より大きくして、中央部を上方に持ち上げる山折状に折り畳んだ状態では、前脚枠5内に後脚枠6が位置するように形成されている。

前脚枠5には上部横枠中央部にキャスター8を一個、左右の縦枠下端からやや上部にはキャスター9、10をそれぞれ前向きに取り付けるとともに、該キャスター9、10より下部の両縦枠には、純粋下端部から上方に向かって円弧状に突出する支持突起11が取り付けられている。

後脚部6の両下端部には、ベッド1の長さ方向(折り畳み方向)に移動可能にする車輪12がそれぞれ取り付けられており、ベッドを展開した状態では該車輪12により支持されている。

前記中央部の支持脚4の一側部には、逆U字型の把手13が取付け板14の保持パイプ15内に一側部を挿入し、九〇度回転可能に保持されており、またこの取付け板14の他側部には、テーブル16等の支柱を選択的に挿入するための保持パイプ17が設けられている。

前記二個の付勢バネ7、7は、枠体2の前端及び枠体3の後端をそれぞれ折り畳み方向へ付勢するために設けられ、付勢バネ7、7の各一端は、支持脚4の下端部に固着されたバネ取付金具にそれぞれ係合されるとともに、一方が付勢バネ7の他端は、鉤状の各一端を枠体2の前端両側の内側に係合させた一対のかつ同一長さの金属棒状のバネ取付部材18、18のU字状に折り曲げられた各他端に係合され、他方の付勢バネ7の他端は、鉤状の各一端を枠体3の後端両側の内側に係合させた一対のかつ同一長さの金属棒状のバネ取付部材18、18のU字状に折り曲げられた各他端に係合される。

前方部側のマット20には内部にギヤーを介装して、前半部を傾動固定可能に構成している。

なお、19は枠体3の一側部に取り付けた把手である。

(作用)

展開状態から、中央部を上方に持ち上げて山折り可能にした折り畳みベッドであり、折り畳み時には、中央部の把手13を外方へ九〇度回転させて上方へ持ち上げる。持ち上げ時には、付勢バネ7の付勢力が作用して軽く持ち上げられる。

展開した状態では前脚枠5の下端が床Fに接触して支持され、一方後脚枠6の下端は車輪12により支持されている。

このため、中央部の把手13を上方へ持ち上げると、前脚枠5と後脚枠6はそれぞれ傾斜するが、前脚枠5は支持突起11の円弧面11aが床面と接しているのでこの支持突起11が支点となって固定され、後脚枠6の車輪12が回転して前脚枠5側に引き寄せられるように近づく。

更に持ち上げると、前脚枠5は水平状態となるが、このとき、キャスター8、9、10の下端が支持突起11より外方に突出しているので、床面に接触し、支持突起11は床面から浮き上がる。

他方後脚枠6も前脚枠5側に引き寄せられて広巾の前脚枠5内に挿入し、床面から浮き上がって支持される。この起立姿勢では前脚枠5の三つのキャスター8、9、10によって支持された移動可能な状態となっている。

再び展開状態にするには、両枠体2、3を広げるようにしてベッド中央部を押さえれば、付勢バネ7の付勢力に抗しながら後脚枠6側の車輪12が床面上を回転して広げられる。

ベッドの展開状態では、前脚枠5の下端が床面に接触しているので、ベッドは不測に移動することはない。

〔第1図〕

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〔第2図〕

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〔第3図〕

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〔第4図〕

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〔第5図〕

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〔第6図〕

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〔第7図〕

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〔第8図〕

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〔第9図〕

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〔第10図〕

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〔第11図〕

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〔第12図〕

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〔第13図〕

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別紙(二)

原告商品説明書

一 商品の種別

折り畳みベッド

二 図面の説明

第1図 展開状態を示す正面図

第2図 展開状態を示す背面図

第3図 展開状態を示す平面図

第4図 展開状態を示す底面図

第5図 展開状態を示す右側面図

第6図 展開状態を示す左側面図

第7図 A-A断面図

第8図 折り畳んだ状態を示す正面図

第9図 折り畳んだ状態を示す背面図

第10図 中央断面図

第11図 展開状態を示す正面図(寸法図)

第12図 展開状態を示す底面図(寸法図)

第13図 展開状態を示す底面図(寸法図)(ワイドサイズ)

三 符号の説明

2 前ベッド半体 2a 前ベッド半体2の裏面

3 後ベッド半体 3a 後ベッド半体3の裏面

12 中間支持脚 15 把手

16 固定支脚 17 固定支脚16の車輪

20、21 マット

31 支持台枠 33 第一引張バネ

34 第二引張バネ 35 支持台枠31の車輪

四 構造及び作用の説明

(構造)

折り畳みベッドの基本的な構成は

対向する一対の前後ベッド半体2、3と、

前後ベッド半体2、3を枢着した部分の下方に設けた中間支持脚12と、

前ベッド半体2の前端側に設けた固定支脚16と、

後ベッド半体の後端位置に設けた支持台枠31と、

前後ベッド半体の各上面にそれぞれ載置したマット20、21と、

前ベッド半体2の背面部に設けた第一引張バネ33と後ベッド半体3の背面部に設けた第二引張バネ34とからなる。

前記支持台枠31の横幅は、固定支脚16の横幅より大きくして、中央部を上方に持ち上げる倒立V字型に折り畳んだ状態では、支持台枠31内に固定支脚16が位置するように形成されている。

固定支脚16には下端に車輪17、17を取り付けるとともに、支持台枠31の両下端部には、前後に一個ずつ、計四個の車輪35が取り付けられており、いずれもベッドを長さ方向(折り畳み方向)に移動可能にするものであるとともに、ベッドを展開した状態では各車輪17、35により支持されている。

前ベッド半体2の後端側の左右側縁部に、左右一対の把手15、15が付設されている。

前記第一引張バネ33は、バネ取付け部材を介して中間支持脚12の下端部と前ベッド半体2の前端との間に張架され、前記第二引張バネ34は、バネ取付部材を介して中間支持脚12の下端部と後ベッド半体3の後端との間に張架されている。

前ベッド半体2に載置されたマット20には内部にギヤーを介装して、前半部を傾動固定可能に構成している。

(作用)

展開状態から、中央部を上方に持ち上げて倒立V字型に折り畳み可能にした折り畳みベッドであり、折り畳み時には、左右の把手15、15の一方を上方へ持ち上げる。持ち上げ時には、第一引張バネ33、第二引張バネ34の付勢力が作用して軽く持ち上げられる。

展開した状態では、固定支脚16の下端に取り付けた車輪17が床に接触して支持され、一方支持台枠31の下端は四個の車輪35により支持されている。

このため、把手15を上方へ持ち上げると、支持台枠31の下端の四個の車輪35は床面と接したままである一方、固定支脚16は傾斜するが、その下端の車輪17、17が床面に接したまま回転して、前ベッド半体2の裏面2aが後ベッド半体3の裏面3aに引き寄せられるように近づく。

さらに持ち上げると、固定支脚16は、引き寄せられて広巾の支持台枠31内に挿入し、水平状態となるが、このとき、後ベッド半体3と支持台枠31とは、若干傾動可能なように構成されているため、固定支脚16全体が床面から浮き上がって支持される。この起立姿勢では支持台枠31の四個の車輪35によって支持された移動可能な状態となっている。

再び展開状態にするには、前後ベッド半体2、3を広げるようにしてベッド中央部を押さえれば、第一引張バネ33、第二引張バネ34の付勢力に抗しながら固定支脚16の車輪17と支持台枠31の車輪35が床面上を回転して広げられる。

ベッドの展開状態では、中間支持脚12が床面に接触しているので、ベッドが不測に移動することはない。

〔第1図〕

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〔第2図〕

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〔第3図〕

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〔第4図〕

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〔第5図〕

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〔第6図〕

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〔第7図〕

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〔第8図〕

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〔第9図〕

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〔第10図〕

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〔第11図〕

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〔第12図〕

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〔第13図〕

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(別紙)被告商品形態目録

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(別紙)原告商品形態目録

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登録実用新案公報

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